漆芸の沼

見える・見えないはなし


異例のコロナ下に
粛々と行われた2020東京オリパラ大会

テレビ観戦で盛り上がった方
自分のフィールドで戦っていた方

それぞれのオリンピックシーズンが
閉幕しました


ところで、
パーソンズIPC会長による
パラリンピック閉会式のスピーチが
話題になっています


~日本に古くからある美しい考え方に
 “金継ぎ”というものがあります。
 誰もが持つ不完全さを受け入れ、
 隠すのではなく大事にしようという考え方です~

中日スポーツ記事


障害を持つ人たちが活躍できる
社会のありようを
金継ぎに喩えるとは、お見事です!



そして、金継ぎのすばらしさに
あらためて感動しました


先日、夫が出張先で半月板を損傷し、
厳しい道中を経験しました

杖2本を使い、ゆっくり進む夫
自分はとにかくエレベーターを探して
最短距離を先導


そうして気付いたのは、
明らかに足が不自由な夫を見ると
たいていの人はよけてくれたり
道を開けてくれました


ありがたい
感謝の気持ちが湧きます


いっぽう、
こんなことも思いました


目に見えるトラブルやハンデには
みんな気付いてくれて
できる範囲で協力してくれる


しかし、
がんばって歩いているけど、
実は足が痛い人
妊婦さん
具合が悪い人
深刻な事情で心が痛い人

見た目にわからない悩み苦しみを抱えた
方は
人知れず戦っているのだと



金継ぎのご依頼者のご相談にも
  見える=器の傷
  見えない=心の傷
とがあり、
金継ぎすることによって
見えない傷が癒されることがあります


現在は各地の金継師さんが工夫され
金継ぎオーダーの方法にも
いろいろありますが、
博多漆芸研究所では、
できる限りお越しいただき
対面でカウンセリングをしています


我々にとって「見積り」は
単なる工賃計算ではなく
目に見えない思いや記憶と出会う大切な場


破損した器は、
手に入れたときや使用したとき
いつ
どこで
誰と
どんなふうに?
の過去を背負って今ここにあり、
それゆえ持ち主の思い入れがあります


それを知ったうえで
金継ぎのご提案ができたらな、
と思っています


なおす方法はひととおりではなく
金継ぎヶ所を目立たせたり
なじませたり
相性の良い色の蒔絵粉を選んだり
ワンポイントの絵を加えたり・・・
様々な方法があります


対面カウンセリングで
金継ぎの工程見本や
仕上げ見本をご覧いただきながら
器の個性やご依頼者の思いに合った方法を
模索していただくのがベストと思います


そして、
カウンセリング体験自体を
楽しんでいただけたら、と思います


(詳しくは金継ぎ注文案内のページ
 をご覧ください)



金継ぎがブームになり
事務的に「何㎝でいくら」
という方法を好む方が増えているのは
メールで金額を尋ねる方が増えている
ことで実感します


しかし、
もしちょこっと余裕がおありなら
そして
大切な器を金継ぎに出される方は
対面でのお見積もりをお試しください
ZoomやLINEなどのご利用も可能です


カウンセリングでは、
器への愛や、
楽しい思い出を話して下さる方が多いです


時には
秘された悲しい思い出を
お話しされる方もいらっしゃいます


目に見えない障害や生きづらさと同じく
器が壊れて初めて湧き上がる感情や
気付きについて聞かせていただくたびに
思い出すことばがあります

夜は暗いから星が見える