漆芸の沼

ギャラリーNOTORI 

 

あれは10年ほど前、
ギャラリーおいしの2階で工房ぬり松の個展をした際、

1階で彫刻の個展をされる方にご挨拶に伺うと、
河原美比古さんとおっしゃる、我々より20歳ほど年上の方でした。
 
 
同じ大学の出身で、
順が非常勤講師をしている九州産業大学でも
教えていらしたことなど接点が多く
「木っ端がたくさんあるから、アトリエまで来たらあげますよ」
と、親切におっしゃっていただきました。
   

河原さんのアトリエは、ぽっこり飛び出た山容が目立つ
飯盛山麓の羽根戸にありました。
   
羽根戸のバス停からは15分ほど、
夏の暑い盛りで汗だくになったのを覚えています。
 

河原さんのアトリエはご自身が経営するLENTEMENTという
建築事務所の工房。

 

河原さんは、世界にその名を馳せるラーメン店・一風堂の
創業者、河原成美さんのお兄様です。

 
お洒落で木の温かみあふれる一風堂の内装は
河原美比古さんによるもの。

 

アトリエでも、やはり木がたっぷり使われ、
どこを見てもカッコイイ!

そして、
ところどころに、おもしろく、不思議で、美しいものが
あふれる場所でした。

   
店内にはスタッフの末藤さん、ダヴィさんが
フランスで買い付けたアンティークが展示販売され、
初めて見るものばかりで、外国に行ったように
眩しくドキドキします。

   
ところで
河原さんが運び出してこられた「木っ端」は、
大きいものは一抱えもあり、

 

「これが木っ端・・・」
と、びっくりする我々に
  「こういう仕事だと木っ端でもこれぐらい。
 まだたくさんあるよ」
と、惜しげもなく下さいました。
   
持参したキャリングカートに
それらを括り付けてゴロゴロ引いて帰る我々を
心配そうに見送る河原さんでした。

   
いただいた木っ端から生まれたのが、
順の花器のシリーズ。
 
当時はほんとうに貧しく、
予備校のアルバイトで食いつないでいた我々にとって、
河原さんは『小僧の神様』なのです。
   
2016年に第72回福岡県美術展で朝日新聞社賞入賞を
いただきましたが、 これも「河原さんのおかげ」と
心の中で思っております。

   
その後は、河原さんがギャラリーおいしで展示会をされた折など
お邪魔してお顔を拝見しておりました。
 
ゆったりした、どこか懐かしいような気持ちになれる
作品を拝見するのも、とても楽しみでした。
 
ところが、河原さんが発表の場とされていた
ギャラリーおいしが2016年で幕を閉じた日以来、
とうとうお会いする機会がなくなりました。

   
それが先日、河原さんから
久々に展示会の案内が届きます。
 


   
  会場はギャラリーNOTORI
  「聞いたことないギャラリーだね~」
と言いつつ、河原さんのすばらしい作品をまた見たくて
レンタカーを借りて行くことになりました。
   
グーグルマップなしでは迷いそうな場所ですが、
近づくとカッコイイ建物の外観で、それとわかりました!
     



     
会場では、河原美比古さんと再会することができました。
 
「お久しぶりです」
 
「よく来てくれたね」
 
笑顔で順の手をがっちり握手して喜んでくださいました!

     
ところで
このギャラリーは、
2006年に亡くなられたお父様・河原大輔氏が遺された
作品を収蔵するために設立されたのだそうです。
 
1年前に建物が完成したばかりで、
展示会は今回が初めて。
   
作品展中なので、大輔氏の作品は2階に仮設されていました。

   
2階の作品もじっくり拝見。
独特の色遣いが魅力的です。

   
ご家族の作品も展示されていました。
すばらしいものばかり。

 
その河原大輔氏、
実は、福岡から美大進学した60代以上の方の間では
レジェンドなのです。

   
修猷館高校で美術教員を勤めるかたわら、
自宅アトリエで美術大学進学を目指す学生を指導
されていました。
   
当時、氏から指導を受けていた方は
  「福岡に予備校も情報も無かった時代、
 河原先生がいらっしゃらなかったら、
 福岡の美大受験生は為すすべ無く路頭に迷っていただろう」
  とおっしゃっていました。
 
 
高校勤務の後に自宅でも指導にあたられる姿は、
公私の堺なく、甲子園の監督さながら
だったそうです。

   
氏は高校退職後、
フクビ(九州英数学舘 別科 福岡美術研究所)の院長に就任します。
   
フクビは福岡でいちばん大きな美大受験予備校になり、
九州一円の美大受験生が集まる場となります。
   
順は大学生のときに、フクビでアルバイトをしたことがあります。
 
2000年頃、まさよもフクビでお世話になる機会があり、
院長の河原大輔氏とお食事をしたことがあります。
 
御年80歳近かった河原院長は、
歩行もご不自由なご様子でしたが、
緊張しまくる自分に、優しくお言葉をかけてくださったことを
覚えています。

       
ギャラリーには、たくさんの本が置かれていました。
美術関係の本はもちろん、
文学、音楽、書、お茶にお花、
教養の豊かさに驚愕です。
 

 
2階には座り心地抜群の椅子が置かれたくつろぎスペースが。
腰かけて見ると、見事な紅葉が!


 

 ギャラリーNOTORI
『河原美比古の彫刻』展
福岡県朝倉市秋月野鳥168
 
会期は残すところ、
12月7日(土) 11:00~18:00
  8日(日) 11:00~18:00
のみとなりました。

場所は「御蕎麦ちきた」の先です。
駐車場スペースはたくさんありました。


 
次回は、春に展示会を計画されているそうです。
 
秋月の新しいランドマークになるかもしれませんね!
 
 
そうそう、
秋月は紅葉が有名ですので、
お出かけの際は、お早目の出発を。
 
12時頃には、秋月へ向かう道が大渋滞でした。