漆芸の沼
木地のはなし
木地・木地師
漆を塗る木製ボディのことを
木地(きじ)
木地を作る専門家を
木地師(きじし)
と呼びます
木地師発祥の地
滋賀県の奥永源寺地区は
惟喬親王の言い伝えが残り
木地師発祥の地とされます
言い伝えの中で、惟喬親王は
お経の巻物やドングリの帽子から
回転ろくろを着想したと言われます
木地の材料
漆塗の器に用いられる材は
ケヤキ、トチ、ミズメザクラ、
クリ、カツラ、セン、
ヒノキ、ホオ、スギ、ヒノキなど
材は、用途や仕上げに合わせ
硬さや木目などの木の個性と照らし合わせて
選びます
また、
輪島のホオ
木曾の木曾ヒノキ・・・のように、
特定の材を多用する地域もあります
木を扱うので、木地師さんには
山深い場所で活動される方が多いです
木地師 北野宏和さん
由緒ある奥永源寺の蛭谷で
ろくろ木地師として活動されている
北野宏和さん
「筒井ろくろ」という工房で
お父様と一緒に
木地制作に打ち込まれています
今回は
カップの木地をお願いしました
*トチ(栃)
*ケヤキ(欅)
の2種類
北野さんから、木地の特徴や
今回お願いしたカップについて
お話を伺ったので
ここに一部シェアします
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トチ
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・柔らかいけれど粘りが無い
・当たり🎯ハズレが多い
👉ハズレの材は黒檀みたいに硬い
・繊維で刃こぼれする(むける)ので木地屋泣かせ
👉常に刃物が研げる状態で作業する
・木地を挽く時に飲み口が欠けやすい
・材には、
チヂミ杢、スポルテッド(土壌の細菌での着色)など
バリエーションが多い
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ケヤキ
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・硬く、やや粘り気がある
・全体の質にムラが無く削りやすい
木地屋さんの修行で最初に削る材料
・道管(木目)が大きくはっきりしているので
繊維の乱れがわかりやすい
👉削る前に難易度がわかるため
轆轤(ろくろ)から飛ぶ前に気付けてありがたい
・道管に土壌中の石灰を吸い上げる性質があり
加工の際に刃物の切れ味が落ちやすい
・アクを多く含み、加工時に手が黒くなりがち
👉砥石が汚れる
・木屑が細かく、くしゃみがよく出る
・木目落ち(道管の凹み)がおきやすいので
仕上げのヤスリがけが難しい
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コップの形について
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・刃物5種類、内側7種類で加工
高台の中の角丸を挽くのに専用の刃物が必要
・内側の底の平面を整えるのが難しい
以上、北野さんからの貴重なお話でした
轆轤から飛ぶ とは?
ところで、お話の中に
“轆轤(ろくろ)から飛ぶ“
とあります
轆轤(ろくろ)は
高速回転する機械に固定した材木に
「バイト」と呼ばれる棒状の刃物を当てて
木を削り回転体を作ります
野球のバットや、
民藝品のこけしも轆轤で作られます
木材には、
節や虫食いのようにわかりやすいものから
硬い〜柔らかい、繊維密度の高〜低のように
削ってみなければわからないことがあります
そのため、
削っている最中に繊維が引っかかって
機械に固定していた木材が外れることがあります
わたしも学生時代にろくろ実習で
実際に木地を挽いた経験があります
実習に際して
先生から聞かされたセンセーショナルな話が
未だ忘れられません
それは
過去に実習を受けた先輩の逸話
・・・・・
轆轤が飛んだ衝撃で
手に持っていたバイト(刃物)が眉間に刺さり
そのまの状態で救急搬送された
・・・・・
木地に刃物が引っ掛かったときの
具合によって
木材が飛んでゆくこともあり
刃物のほうが飛ばされることも
あるのです
轆轤で木地を挽くのは
危険を伴うたいへんなお仕事です