漆芸の沼
自然派宣言
【VOCとは?】
VOCって聞いたことありますか?
VOCとは、
Volatile Organic Compounds
室温で揮発する有機化合物です。
塗装、建築、自動車産業、香料、食品加工
さまざまな分野で有効利用されています。
VOCには、
石油由来だけでなく、
植物由来のものもあります。
【VOCと漆芸・金継ぎ】
カシュー系の漆芸・金継ぎや
一般的な本漆系漆芸・金継ぎでは、
漆を薄める
漆の硬化を遅らせる
筆や道具を洗う
など、様々な用途でVOCを使います。
●カシュー系(簡易金継ぎなど)
たとえば、簡易金継ぎのように
カシュー系塗料を使う場合は、
「カシュー」
「新うるし」
「本うるし」
といった合成塗料。
そして、うすめ液(シンナー)を使いますが
成分はトルエン、キシレンです。
※リンク
:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
リンクを見た方、どう思われましたか?
有害性欄の
「区分1」「区分2」などとあるものは、
数字が小さいほど影響が大きくなります。
トルエンやキシレンは
石油から作られる化学物質で
毒物及び劇物取締法で
「劇物」に指定されています。
※リンク:国立医薬品食品衛生研究所
刻苧埋め・錆埋めのかわりに使う
エポキシ樹脂の合成原料ビスフェノールA
は、環境ホルモンです。
●本漆系
本漆を使うから大丈夫でしょうか?
本漆系では、
「テレピン油」
「樟脳油」
「片脳油」(樟脳油から作られる)
などのオイルを使います。
それらは「テルペン類」という物質です。
厚生労働省の
安全情報データセンターによれば
引火性
眼・呼吸器への刺激
皮膚・中枢神経系・内臓へのダメージ
などの影響について記載があり、
使用時の室内換気や保護具の着用を促しています。
また、
中身や容器は専門の廃棄物処理業者に
依頼して廃棄すること
とあり、家庭ごみとして廃棄できません。
テレピン油の成分の
β-ピネンを見ると
水生生物に非常に強い毒性
とあります。
【テルペン=毒ではない】
テルペンは“天然の化学物質”の異名を持つ、
果実や樹木に含まれる成分で、
森林の爽やかな香りの元です。
血圧や脈拍を整える
集中力を高める
防カビ、抗菌
ホルムアルデヒド吸着など
多様な効果があり
閾値を超えなければ、わたしたちに様々な
恩恵をもたらしてくれます。
しかし人工的に濃縮した油の揮発成分は
自然界に存在しない高い濃度なのです。
現在、流通するテレピンの多くは
パルプ生産の際に出る「黒液」
と呼ばれる液から分溜して作られる
硫酸テレピンという、合成テレピンです。
漆屋さんや画材店で売られている
「純テレピン」「ガムテレピン」などは
松の根や枯れ木から蒸留された植物由来の
製品です。
いずれにせよ、成分はα-ピネン、β-ピネン
などです
【VOCの影響】
実体験として
テレピンを使っている部屋で、
くしゃみ、鼻水、頭痛、眠気、倦怠感などの
症状が出ていました。
理由がわからず何年も苦しんでいましたが
有機溶剤のことを学んで
それらが原因だと知りました。
テレピン油や樟脳油を使わなくなってから
不快な症状は出なくなりました。
VOCは
一定以上の濃度になると
我々のからだや環境に何らかの影響が
あるのではと、懸念されています。
厚生労働省では、
シックハウス症候群を防ぐために
室内の空気のVOC濃度について
総揮発性有機化合物(TVOC)
400μg/m3 の暫定目標値を
もうけています。
しかし、
人によって体質が異なることや
データ不足などで
VOCによる実際の影響について
名言できない段階なのです。
印刷インキや塗装などの業界では
VOCフリー、ノンVOC
と表示した商品や工法が増えてきました。
化学物質過敏症や香害など
現代特有の問題を意識した行動です。
参考(香害とは?)
:RKB放送「広がる香害」(YouTube)
【自然派宣言】
我々は、
漆芸・金継ぎに有機溶剤を用いるのは
不適切だと考えます
博多漆芸研究所
KINTSUGI JAPANの講習では
VOCを使いません。
★安心して制作できる
★安心して作品を使える
★廃棄物で環境負荷を生まない
★道具・材料は家庭ごみで廃棄できる
それが、
自然派漆芸
自然派金継ぎです。
寒い日、暑い日、pm2.5が多い日は
窓を閉め切って作業しますよね。
自然派なら換気をしなくても大丈夫
普通の生活環境の中で制作が楽しめます。
【アルコール筆洗い廃止のお知らせ】
漆芸では漆刷毛を漆で洗いますが
洗えているか心配される方がいるので
筆をお酒で洗っていました。
実際は気休めのようなものですので、
思い切ってシンプルに
アルコール筆洗いを廃止しました。
現在の筆の洗い方はこちら↓
YouTube「nonVOC 筆の洗い方」